代表的疾患と治療法
腎盂がん・尿管がん

腎盂がん・尿管がん
腎臓から膀胱に尿を送る通り道にできるがん、それが腎盂がん・尿管がんです。尿路の粘膜(尿路上皮)から発生するがんで、膀胱がんと似た特徴を持ちますが、発症は比較的まれで、膀胱がんの5-10%程度にとどまります。
多くは50歳以上の男性に見られ、喫煙歴や化学物質への曝露、シクロフォスファミドなどの薬剤使用、鎮痛薬の長期服用などが発症のリスクとされています。
初期症状として最も多いのが、痛みを伴わない血尿(無痛性肉眼的血尿)です。「たまたまトイレで気づいた」「健康診断で見つかった」という声も少なくありません。進行すると、尿の流れが妨げられて背中やわき腹の痛みを感じることもあります。
診断と検査の流れ
上部尿路がんは、症状だけで判断することが難しく、複数の検査を組み合わせて診断を進めます。
- ・尿検査、尿細胞診:がん細胞の有無を調べます。
- ・腹部エコー:腫瘍の存在や水腎症の有無を確認します。
- ・CTウログラフィー、造影MRI:腫瘍の位置や広がり、転移を詳しく評価します。
- ・腎盂尿管鏡検査と生検:がん組織を直接観察し、確定診断に繋げます。
- ・逆行性腎盂造影:内視鏡が入りにくい場合の補助的検査です。
画像診断と組織検査の結果から、腫瘍の進行度(ステージ)を評価し、最適な治療方針を決定します。
主な治療法と臓器温存への取り組み
川崎医科大学泌尿器科学教室では、がんの根治性と生活の質(QOL)を両立する治療を目指しています。上部尿路がんの標準治療は、腎臓と尿管を一括して摘出する腎尿管全摘除術(RNU)です。ただし、腎機能をできるだけ温存することを目標に、条件を満たす場合には腎温存治療も選択肢となります。
病期と主な治療法
- 初期がん(cTis–T1)
- 経尿管的レーザー切除や部分尿管切除などの腎温存手術
- 進行がん(cT2–T4)
- 腎尿管全摘除術(RNU)+膀胱袖状切除
- リンパ節転移がある場合
- シスプラチンを含む術前化学療法(GC療法など)
- 再発・遠隔転移
- 免疫チェックポイント阻害薬や抗体薬物複合体(ADC)など、個別化された全身治療が検討されます
当教室では、より正確で低侵襲な治療の実現のためにロボット支援手術(da Vinci)を積極的に導入。泌尿器がん領域で蓄積した高度な手術技術を活かし、上部尿路がんにも展開しています。
また、内視鏡による最新機種のレーザー切除により、腎機能を残しながらがんの根治を目指す治療も行っています。腎臓を残すことが、将来的な生活や他疾患治療にも大きな影響を与えるため、患者さん一人ひとりに合わせた最善の方法を提案しています。
さらに、当教室では多様な疾患や治療に対応するため、教室内外の関係診療科や専門職と連携しながら、患者さん一人ひとりに合わせた最適な治療法を検討しています。個々の症例に応じてチームで協議し、治療の選択から術後のサポートまで一貫した体制で対応できる点も、当教室の強みのひとつです。
再発予防と術後のフォローアップ
上部尿路がんでは、治療後に膀胱がんが再発する可能性が20~40%と高く、注意が必要です。当教室では、再発の早期発見と長期的な健康維持のため、以下のような継続的フォローを大切にしています。
- 3〜6か月ごとの膀胱鏡・尿細胞診
- 年1回以上のCT urographyや内視鏡検査
- 禁煙、水分摂取の指導、化学物質への曝露対策など生活面でのアドバイス
関連情報はこちらから
臓器温存治療について→ 患者さんへ→Contact
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