Organ Preservation Therapy in Urologic Cancers
泌尿器がんにおける
臓器温存療法

変わりゆく泌尿器がん治療のかたち
泌尿器がんの根治治療はこれまで、手術や放射線治療が中心でした。標準治療としてこれらの治療が施行される一方で、近年ではライフスタイルの変化、高齢化や持病を持つ方の増加により、すべての方に従来の根治治療が最適とは限らなくなってきています。
たとえば、身体への負担が大きい手術が、すべての方に適しているとは限りません。そうした背景から、身体にやさしく、機能や生活の質(QOL)を保つ医療へのニーズが高まっています。

川崎医科大学泌尿器科が提案する"治し、そして支える医療"
臓器温存療法とは?
がんを制御しながら、排尿・性機能などの大切な臓器機能を守る治療法です。私たちは治療後の人生における豊かさを重視し、「がんを治す」と「生活を支える」の両立を大切にしています。
当教室が附属病院でがん治療として注力しているのが、「臓器温存療法」です。これは、膀胱や腎臓などの臓器を可能な限り残しながら、がんの制御と身体機能の温存を両立する治療法です。
がん治療は今、「すべての患者さんに同じ標準治療をおこなう」時代から、「患者さん一人ひとりのニーズに応える医療」へと進化しています。泌尿器科領域ではまだ発展途中ながら、がんの性質や患者様の状況に応じて、副作用を抑えつつ効果的な治療法を選ぶ研究と実践を積極的に進めています。
経験に裏打ちされた臓器温存療法
当教室の主任教授・小村和正は、泌尿器がん、特に膀胱がん・腎盂尿管がん・前立腺がんといった尿路上皮がんを中心に、手術だけでなく臓器温存療法の分野で豊富な経験を持つ専門医です。
- ■日本内視鏡外科学会/日本泌尿器内視鏡外科学会 腹腔鏡技術認定医
- ■泌尿器ロボット支援手術プロクター(ダヴィンチ膀胱・前立腺・副腎・腎尿管)
- ■化学放射線療法を軸とした膀胱温存療法では、世界でも有数の経験者の一人

これらの知見は研究にも展開され、症例から得られたデータが最先端のトランスレーショナル研究(基礎と臨床をつなぐ研究)にもつながっています。
このような確かな技術と豊富な臨床経験をもとに、川崎医科大学附属病院では臓器温存療法を積極的に導入し、保険診療の中で安定的に提供する体制を整えています。
私たちは、「臓器を残す」という選択肢を、より多くの患者さんに届けたいと考えています。
チームの連携と技術の力で支える治療体制
がんを治すだけでなく、臓器を守るためには、どのような治療が行われているのでしょうか?
私たちは、多職種連携×ハイブリッドな治療設計の標準化により、保険診療の中で安定的かつ最大限の治療を提供できる体制を構築しています。
Precision CRT(精細化学放射線療法)とは?
患者さん一人ひとりに最適な放射線治療と抗がん剤を組み合わせ、臓器を残したままがんを制御する治療法です。
小村教授はこの分野において世界有数の経験を有しており、川崎医科大学においてより精度の高い温存根治療法の開発をライフワークとしています。

がんの根治性と患者様の生活の質(QOL)を両立させるという難題に対して治療の柱となるのは、放射線と抗がん剤の併用により相乗効果を狙う、化学放射線療法(CRT:Chemoradiotherapy)です。
この治療は単に放射線を当てるだけではなく、どの範囲にどの強さで照射するか、どの薬剤をどのタイミングで投与するかなど、極めて綿密な治療設計が必要です。
川崎医科大学附属病院では、泌尿器科・放射線診断科・放射線治療科だけでなく、放射線技師、認定看護師などの多職種が密に連携ながら患者さん一人ひとりに治療プロトコールを作成し、それぞれの専門性を活かして治療に取り組んでいます。
こうした連携体制のもと、保険診療内で最大限の治療を提供する体制を整備しています。
IMRT(強度変調放射線治療)とは?
正常な組織へのダメージを抑えつつ、がんに集中して放射線を当てることができる高精度な治療法です。
一例ごとに照射範囲・線量・計画を丁寧に設計し、身体への負担を最小限に抑えることを目指します。
特に、放射線治療科・放射線診断科との密な連携のもと、最新の放射線機器を用いた全骨盤強度変調放射線治療(IMRT:Intensity-Modulated Radiation Therapy)を活用し、照射範囲・線量・照射計画を一例ずつ丁寧にカスタマイズしています。
さらに、患者さんの腎機能や全身状態に応じた個別化された抗がん剤の化学療法(レジメン)を組み合わせ、安全性と治療効果の両立を追求しています。
がんと向き合うあなたへ
「膀胱を残したいと思っているけれど、
手術しかないと言われた」
「できるだけ身体に負担の少ない
治療を選びたい」
「納得したうえで、自分に合った
治療を選びたい」
川崎医科大学附属病院では、がんの進行度や全身状態に応じて、膀胱などの臓器を残しながら治療を行う「臓器温存療法」に取り組んでいます。この治療を選ばれる方の多くは、他院で「全摘するしかない」と言われた後、セカンドオピニオンとして全国各地から来院される患者さんです。すべての患者さんに適しているわけではありませんが、状態に応じては充分に根治を目指せる選択肢となります。

私たちは、患者さん一人ひとりの身体と生活、そして希望に耳を傾け、手術だけにとらわれない、幅広い治療の可能性をご提案しています。また、多くの診療科との協力体制を築きながら、科学的根拠と患者さんへの想いをもって、治療に取り組んでまいります。
「自分にとって最善の治療とは何か」を一緒に考えたいとお考えの方は、どうぞご相談ください。
私たちは、その気持ちに正面から向き合いお応えします。
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