特徴的な治療
膀胱温存療法
Bladder Preservation
膀胱温存療法
―保険診療の中で
最大限の治療を ―
最新の免疫チェックポイント阻害薬を膀胱がん治療に組み入れ、すべて保険診療の範囲内で、膀胱をできる限り温存する先進的な膀胱温存治療を実践しています。
膀胱温存療法とは?
膀胱温存療法とは、膀胱の機能をできるだけ保ちながらがんを制御することを目的とした治療法です。
主に筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)、再発性筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)を対象とし、TURBT、化学療法、放射線療法などを組み合わせて行う集学的治療です。
川崎医科大学付属病院における膀胱温存療法
当院の小村和正教授は、年間100例以上の膀胱温存療法をてがけてきた、国内有数の専門医です。
保険適用の膀胱温存療法を積極的に行い、患者さん一人ひとりの病状や生活背景に応じて、膀胱がんに対する最適な治療計画を立案しています。
膀胱温存療法の利点
- ・膀胱機能の維持による患者さんの生活の質(QOL)向上
- ・性機能や社会生活の保持
- ・高齢者・合併症を有する方への選択肢
対象となる患者さん
膀胱温存療法は、すべての患者さんに適用できるわけではありませんが、患者さん一人ひとりの病状や生活背景に応じて、リスクとベネフィットを丁寧に共有しながら判断しています。特に、膀胱の機能が良好に保たれている方に対しては、積極的に温存療法の選択肢をご提案することが、川崎医科大学の方針です。
また、化学療法や放射線療法に伴う影響を適切に乗り越えるためには、全身の健康状態が安定していることも重要な要素となります。がんの広がりや組織型、治療に対する反応などの医学的情報に加え、患者さんの年齢や腎機能、日常生活の状況なども含めて、総合的に治療方針を検討していきます。
なお、がんの性質や進行度によっては、膀胱全摘除術がより安全かつ確実な選択肢となる場合もあります。その際も、患者さんとよく話し合い、ご納得いただいたうえで治療を進めてまいります。
当院では、患者さん一人ひとりに合わせた“個別化治療”を大切にしています。膀胱温存をご希望の方や治療に迷われている方も、まずはお気軽にご相談ください。
外来受診、セカンドオピニオンをご希望の方は、川崎医科大学附属病院窓口までお気軽にご相談ください。
日本全国から患者さんに受診いただいております。
治療の流れと方法
川崎医科大学附属病院では、泌尿器科を中心に、放射線治療科、放射線診断科、病理学教室に加え、排尿ケアチームの専任看護師や地域連携室との多職種連携により、膀胱温存療法の質を高めています。
治療計画の立案から実施、その後のフォローアップに至るまで、専門チームによる一貫した支援体制を整えています。
01
まず初めに、TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)を行い、膀胱内の目に見える腫瘍を可能な限り切除します。この段階で得られる病理組織により、腫瘍の悪性度や筋層浸潤の有無を診断します。腫瘍がどれだけ切除できたかは、今後の治療方針を決定するうえで非常に重要な情報となります。
02
次に、治療計画に基づき入院のうえ、化学放射線療法(CRT)を行います。これは抗がん剤の投与と放射線治療を同時に実施することで、相乗的な治療効果を狙うものです。治療前には多職種カンファレンスを行い、患者様の腎機能や合併症、全身状態などを十分に考慮して抗がん剤の種類や量を個別に調整し、安全性と有効性のバランスを重視した治療を行います。
03
当院では、放射線治療においてIMRT(強度変調放射線治療)を導入しており、膀胱全体に加え、骨盤リンパ節領域(全骨盤)までを高精度で照射可能な体制を整えています。これにより、正常な組織へのダメージを抑えつつ、がん細胞には十分な線量を届けることが可能となり、より高い治療効果を期待できます。
04
治療終了後は、膀胱鏡検査・尿細胞診・画像検査(CT、MRIなど)を組み合わせて、がんの治療効果を判定します。腫瘍が完全に消失している「完全奏効」の状態が確認された場合には、膀胱温存を継続します。一方で、腫瘍の残存や再発が確認された場合には、膀胱全摘除術を含めた次の治療方針について再評価を行います。
フォローアップと再発時の対応
- ・定期的な膀胱鏡検査、尿細胞診、画像診断による慎重な経過観察
- ・再発時は再TURBT、膀胱内注入療法、補助化学療法、サルベージ全摘など柔軟に対応
多職種連携×ハイブリッドな治療設計の標準化
私たちは、多職種連携×ハイブリッドな治療設計の標準化により、保険診療の中で安定的かつ最大限の治療を提供できる体制を構築しています。
特に力を入れている膀胱温存療法について、採用している治療法(CRTとIMRT)をご紹介します。
Precision CRT(精細化学放射線療法)とは?
患者さん一人ひとりに最適な放射線治療と抗がん剤を組み合わせ、膀胱を残したままがんを制御する治療法です。
小村教授はこの分野において世界有数の経験を有しており、川崎医科大学においてより精度の高い温存根治療法の開発をライフワークとしています。
膀胱がんの根治性と患者様の生活の質(QOL)を両立させるという難題に対して治療の柱となるのは、放射線と抗がん剤の併用により相乗効果を狙う、化学放射線療法(CRT:Chemoradiotherapy)です。
この治療は単に放射線を当てるだけではなく、どの範囲にどの強さで照射するか、どの薬剤をどのタイミングで投与するかなど、極めて綿密な治療設計が必要です。
川崎医科大学附属病院では、泌尿器科・放射線診断科・放射線治療科だけでなく、放射線技師、認定看護師などの多職種が密に連携ながら患者さん一人ひとりに治療プロトコールを作成し、それぞれの専門性を活かして治療に取り組んでいます。
こうした連携体制のもと、保険診療内で最大限の治療を提供する体制を整備しています。
IMRT(強度変調放射線治療)とは?
正常な組織へのダメージを抑えつつ、膀胱がんに集中して放射線を当てることができる高精度な治療法です。
一例ごとに照射範囲・線量・計画を丁寧に設計し、身体への負担を最小限に抑えることを目指します。
特に、放射線治療科・放射線診断科との密な連携のもと、最新の放射線機器を用いた全骨盤強度変調放射線治療(IMRT:Intensity-Modulated Radiation Therapy)を活用し、照射範囲・線量・照射計画を一例ずつ丁寧にカスタマイズしています。
さらに、患者さんの腎機能や全身状態に応じた個別化された抗がん剤の化学療法(レジメン)を組み合わせ、安全性と治療効果の両立を追求しています。
よくあるご質問(FAQ)
手術なしで膀胱がんは治るのですか?
もちろんすべての方に当てはまるわけではありませんが、手術で全摘せずに膀胱を温存したままがんの根治を目指せる可能性があります。
当院では他病院で治療適応がないと伝えられた患者様でも、患者様の想いとご希望をお聞きして、最もベストと考える治療法を提案することを第一に診療にあたっております。
がんの進行度や個別の条件を丁寧に評価し、膀胱温存療法が適応かどうかを慎重に判断しています。
膀胱温存療法はどのような治療ですか?
「経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)」「最新の免疫チェックポイント阻害薬と化学療法」「放射線治療」の3つを組み合わせる治療法が軸となります。がんをしっかり治療しながら、できるだけ膀胱の機能を保つことを目指します。
副作用はありますか?
使用する薬剤や放射線治療には副作用の可能性がありますが、色々な診療科でのチーム医療体制をしいており、腎機能や体調に応じて治療内容を個別に調整しています。
最新の放射線機器を用い、正常な組織へのダメージを最小限に抑える治療法を取り入れていることが大きな特徴です。
他の病院では「膀胱を全摘出するしかない」と言われましたが、本当に温存できますか?
当院には特に西日本全域よりセカンドオピニオンとして来院される方が多数いらっしゃいます。
他院で膀胱全摘出を勧められた方でも、診察のうえで温存療法が可能と判断されるケースも多くありますので、まずは一度ご相談ください。
高齢でも受けられる治療ですか?
はい。この治療法は従来手術に耐えられないようなご高齢の患者様にも適応があります。体力や腎機能などを評価した上で、ご年齢にかかわらず可能な限り身体への負担が少ない方法を検討します。
患者様一人ひとりに合った治療をご提案いたします。
入院や通院はどれくらい必要ですか?
治療内容によって異なりますが、おおまかには1-2か月程度の治療期間を必要とします。放射線や化学療法は通院での実施が基本ですが、全身状態などに応じて調整可能です。
もちろん遠方からの患者様は入院を継続のうえ施行されることもあります。詳細は外来でご説明させていただきます。
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